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豊川炭鉱馬車鉄道という幻  〜米沢に鉄道馬車が走っていた〜  第十三回

◎豊川炭鉱馬車鉄道の速成を望む(1)

明治30年12月9日の米澤新聞に株式申込の広告が掲載されたが、申し込みがはかばかしくしくないため、速成を望むというキャンペーン記事が31年6月25日より3回にわたって掲載された。

 わが郷の有識者相謀り、豊川炭鉱馬車鉄道株式会社が創立されんとするや吾人とわが郷の公利共益を増進する大なるを見、まさにその挙を賛する。なおかつその速成を切望しその成功一日も早くすればわが郷土は一日の大幸福を享くべきを説き、その成立一日でも遅れればわが郷土は一日の損害を受けるものたるを論せり。しかり、しかして該会社の計画着々歩武を進るごとくにして、甚だ遅々たるの感あるは何ぞや。あるいは沿道頑迷の愚民ありて未だ文明の利器を利用するを知らざるためなるか、あるいはその利益の洪大なるを妬みてその事業を妨害せんとするの徒あるがためなるか、乞う、先ず該会社が創立の主旨数件を左に掲げて世人の熟読を煩わさんとす。

「交通上の公益」

道路はこれ国土の脈絡なり。神経なり。人身にして脈絡の体質発育に伴わざるあらば病必ず生ずべく、神経の通せざるあらば局部必ず用を為さざるべし。国家にして脈絡の社会進運に伴わざる処あらば病弊必ず生ずべく神経の通ぜざる土地あらば生霊困憊して倒れんのみ。交通機関の国家の隆興と并進せざるべからざる実にそのごとく道路の社会の進運は両行せざるべからざる実にかくの如し。しかして今やわが郷鉄道なる大脈管板嶺を横断し、米沢の東端より直ちに丹泉を貫き山形を経秋田に入り青森に出て日本鉄道東北線に連絡線とす。わが郷土の交通機関に一大激震を与える将に近きにあり。これが支線たり。細管たり。脈管またこれに伴わざるあらば各局部しの営業を欠き、神経を絶ち病弊忽ち生じ、十万生霊また困憊するに至る論を待たざるなり。われら相謀り炭鉱馬車鉄道を創設しわが郷置賜三郡唇歯補け補車相依るの各局部をして大脈管に伴い神経を敏活なさしめ栄養を十分ならしめ交通機関をして国土の隆興に伴わしめ社会の進運を添しめ、もって国家の発達を謀り公衆の利便を策せんとす。本線は小松より窪田を経て米沢に達し窪田より分岐して赤湯に至るを第一回とし、次いで小松並びに赤湯より長井町に延長し尚且つ奥羽線貫通後の実況に徴して高畠町に及ぼしをもって各局部の栄養をして益々完全ならしめ各支線各細管の脈絡をして益々敏活ならしめんとす。

「石炭使用に関する公益」

燃料の人生に必須なるは実に食料の人生に必須如くなるごときしかり。しかして社会発達は益々薪炭の需要を増加し工業の進歩はいよいよ燃料の供給を要す。社会の発達は駸々としてその停止するところを知らず。工業の進歩は隆々としてその限界する所を見ざるも限りあるの原野限りである山嶽はまた薪炭の供給に限りあらんとす。況や頃者山林の濫代は益々薪炭の供給を減少するにおいてか、薪炭の供給は需要と伴わず価格益々昂騰してわが郷土生活上年に日に困難に陥らんとす。しかしてまた工業の発達を阻害し社会の進捗を防厭せんとするの恐れあり。わが郷土のために謀り公衆万年の大計を策戦と欲するものあに天府を利用して外に燃料を求めずしてかならんや。然りしかして数年前西置賜の地、燃料に最も好適せる石炭の発見ありしといえども不幸にして採掘者その人を得ず、みだりに品質粗悪なりとしてこれを退けたりしもその後尚不休不屈の有志者ありて数十間の試掘を経、遂に良好の石炭を採掘するを得たるは実にわが郷土の一大幸福ならずや。然りといえども採掘の事業たるや多額の資本を要すると同時に、経験ある人これに従事するにあらずんばその効果を収るすこぶる難事たるをいかが、これこの会社を創立し大いにわが郷土の公益を謀らんとする所以なり。

2018.07.11:[会員さんからのコンテンツ]

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